久米ゼミ 第18期生卒業論文

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"Do Elections Divide the Public? Affective Polarization and Electoral Outcome"
  • Do elections divide the public? In this paper, I examined this research question by investigating the relationship between electoral outcomes and affective polarization. Affective polarization, characterized by increasing hostility towards political opponents based on strong party attachment, has become a prominent concern in contemporary political science, as we have seen serious social divisions as a consequence of this phenomenon. However, the details of why and how it happens still remain unclear. Here, the influence of the crucial event of democracy, elections, has received limited attention in existing literature, and this study contributes to the understanding of the roots of affective polarization by addressing the gap.
  • Based on previous research, I posit two main hypotheses about the two components of affective polarization (in-group favoritism and out-group hostility): Win/Loss hypothesis, suggesting that electoral winners reinforce in-group favoritism and weaken out-group hostility compared to losers, and Closeness hypothesis, proposing that electoral closeness intensifies affective polarization independently and interactively with win/loss. To test these hypotheses, I employ regression analysis with the repeated cross-section survey data from the American National Election Studies (ANES) conducted before and after every U.S. presidential election from 1980 to 2020, merged with the results of each election including country level and state level.
  • Results indicate that, only at the country level electoral winners strengthen both in-group favoritism and out-group hostility compared to losers, which indicates that winners get more polarized than losers after the election. This suggests that, unlike traditional theories, not only losers but also winners can harm the public or democracy through different pathways. With theoretical explanation combined, it also implies that electoral losers face a dilemma about feeling towards out-group, between increasing out-group hostility based on their feelings or preferred policy, or decreasing it by adjusting themselves to the outcome based on cognitive motivation. On the other hand, electoral closeness does not have any significant effect on polarization independently or interactively. I emphasize the need for further research controlling factors such as the timing of surveys which might have affected the empirical results. Additionally, I explore the role of party identification, finding that partisan individuals experience mitigations of in-group favoritism and out-group hostility after the elections. This implies that the relief effect on polarization after elections is bigger for partisan individuals. Results also indicate that their identification reinforces the effect of winning in increasing out-group hostility, which suggests that partisan individuals have higher tendencies to act based on cognitive motivation when they lose, or to react more strongly to the outcome when they win.
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『天然資源は所得にどのような効果をもたらすのか―民族的分極化を通じた実証分析―』
  • 天然資源に恵まれた多くの国では、資源の存在がむしろ経済発展や⺠主化を阻害するという「資源の呪い」に悩まされてきた。この資源の呪いに関しては、これまでにも様々な議論が展開されており、資源の呪いに陥る要因についても⾮常に多くの要素やメカニズムが考えられてきた。
  • その中でも本稿は資源の呪いを決定づける要因として⺠族的分極化という観点に着⽬し、先⾏研究のレプリケーションを⾏いながら資源がもたらす所得への効果についてクロスナショナルな分析を⾏った。その結果、⺠族的に分極化した国では天然資源は⾮熟練労働者をはじめとする低所得者の所得に対して負の効果を持つことが分かった。⼀⽅で、⺠族的に分極化していない国に対しては、天然資源は相対的貧困率を減少させる効果を持つことが明らかになった。⺠族に基づく対⽴集団がレントシーキング活動をはじめとする資源獲得競争により資本を投⼊し⽣産活動そのものが阻害されることで、⺠族的に分極化した国でのみこうした国⺠所得の低下を招くことが⽰唆される。ただし、全ての⺠族集団に⼀律に発⽣する現象なのか、特定の⺠族でのみ所得低下が⾒られるのか等、天然資源が国⺠所得に及ぼす効果をより具体的に理解するためには、今後⼀国内に焦点を当てたミクロな視点での分析が求められる。
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『性別、人種ごとの選挙公約―選挙公約内容とそのフレーミングのテキスト分析―』
  • 本分析では、現在の米国下院議員の選挙公約について、性別 (男性、女性)、人種(白人、黒人またはアフリカ系、ヒスパニックまたはラテン系、アジア系)といった属性ごとに、テキスト分析をすることで、属性の違いによる選挙公約の内容や、使用する語彙の言い回し(特に動詞、副詞、形容詞)の違いを明らかにしようと試みた。女性やマイノリティなど、社会で過小評価される属性の人々は、議会でも過小評価される傾向にあり、選挙キャンペーン時の選挙公約内容やその表現には、何らかの特性があることがその一因ではないかという観点から、本研究を試みた。
  • そこで、以下の2点のリサーチクエスチョンをたて、テキスト分析をした。第一に、選挙公約の内容は属性によりどのように異なるかである。具体的には、ホームページ上の選挙公約の内容は、性別(男性、女性)、人種 (白人、黒人またはアフリカ系、ヒスパニックまたはラテン系、アジア系)の間でどのように異なるのか、分析を行なった。第二に、選挙公約の言い回し(フレーミング)は属性により選どう異なるかである。この問いに関しては、ホームページ上の選挙公約の中で用いられる動詞、副詞、形容詞等に着目し、性別(男性、女性)、人種 (白人、黒人またはアフリカ系、ヒスパニックまたはラテン系、アジア系)の間でどのように使用される語、言い回しが異なるのか分析を行なった。
  • 上記のリサーチクエスチョンをもとに、①候補者は、性別(男性、女性)、人種 (白人、黒人またはアフリカ系、ヒスパニックまたはラテン系、アジア系)の自身の属性を強く反映した選挙公約を提示する、②社会的に過小評価される属性の候補者(女性、人種マイノリティ)は選挙公約において、過激な言葉や言い回しを使う傾向にあるという二つの仮説を立て、KH Coderを用い、共起ネットワークと抽象語の対応分析を用いて検証を行った。
  • その結果、仮説①については、性別 (男性、女性)、人種(白人、黒人またはアフリカ系、ヒスパニックまたはラテン系、アジア系)いずれの観点にても、仮説のような傾向が見られた。まず、性別を属性とした時、男性議員は、「アメリカ」という単語を用いることが多く、また、米国政府やその支出に関連する内容について強調する傾向にあった。一方、女性議員は、価格、子供の教育、社会の中での権利等、女性が育児、家事、社会進出をしていく際に、重要なことがらに関する議題に関して選挙公約でよく言及していた。人種に着目してみても、マイノリティを一つのグループとしてみた(黒人またはアフリカ系、ヒスパニックまたはラテン系、アジア系を人まとまりとして考えたとき)ときに、白人の選挙公約と対比すると、マイノリティの属性を強く反映した選挙政策を打ち出していた。白人は、「アメリカ」という単語を用いることが多く、また安全や、仕事、政府に関して、より多く言及していた。一方でマイノリティ議員は、健康・ヘルスケア問題、教育問題、価格高騰等、マイノリティ市民にとって重要な選挙公約を掲げていた。一方、仮説②については、性別、人種いずれの属性においても、社会的に過小評価される属性がラディカルな言葉や言い回しを用いているとはいえないという結論に至った。
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『選挙候補者のインターネットへの積極性は得票率に影響を与えるか―第26回参議院議員通常選挙における計量分析―』
  • 2013年の公職選挙法改正を経て、日本で「ネット選挙」が解禁された。インターネットを活用した選挙運動が盛んなアメリカや韓国と比較すると制度面でも国民の理解という側面でも未熟な部分が散見されるが、日本の選挙制度の一つの転換点として期待される。
  • アメリカや韓国では選挙運動期間中、候補者が発信する情報を基に有権者がインターネット上で活発に議論する事例がみられ、それによってオンライン上で生まれた世論がオフラインでの選挙結果に影響を与えるに至っていた。現状日本では、有権者側からはSNS関連の媒体は有用な情報源として見られていなかったり、より情報の発信が求められたりしていることから、米韓の事例のような段階には至っていないように思われる。そのため本稿では、情報を発信する立場である候補者について着目し、分析を行った。
  • 先行研究では、選挙におけるインターネットの活用は、情報の往来が活発になることで弱小候補者の動員能力等が上昇し、候補者間の条件の差が縮まる可能性があることや、公職選挙改正前の研究ではあるものの、選挙地盤をすでに有している自民党所属候補者は、他候補者と比較して自分の政治キャリアを前面に押し出し、かつ情報発信を避ける傾向にあることなどが示されていた。
  • 以上の先行研究から得られた理論を、2022年に実施された第26回参議院議員通常選挙に当てはめ、「候補者のインターネットへの積極性が高いほど得票率が上昇する。」「候補者のインターネットへの積極性が得票率に与える影響は、自民党所属候補者かどうかで異なる。」という二つの仮説を構築し、検証した。検証に際して、候補者のインターネットへの積極性を各候補者の選挙ホームページに掲載されているSNSアカウント数、選挙結果を得票率として表現した。
  • 分析の結果、前者の仮説を検証したモデルからは統計的に有意な結果が得られ、候補者のSNSアカウント数が上昇するほど得票率は上昇するという、仮説を支持する形の結果が得られた。後者の仮説を検証したモデルからは統計的に有意な結果が得られず、仮説は支持されない形となった。
  • ただ、インターネット利用に積極的な候補者ほど多くのSNSアカウントを利用する傾向にあるという想定から「SNSのアカウント数」を変数として用いたが、各SNSには、文字中心の媒体なのか動画中心の媒体なのかなど、質的な差異が見受けられ、同変数は連続的に変化する変数ではない可能性がある。そのため、統計的に有意な結果が得られたものの、その解釈には慎重な判断を伴う必要があると考えられる。また、後者の仮説を検証したモデルでは、扱ったデータの母数が分析するには不十分であった可能性があり、その点課題が得られた。  総じて本分析からは候補者のインターネットへの積極性の得票率への影響について仮説を支持する傾向の結果が得られたものの、同時に、変数の捉え方とデータの母数における課題が露出した。よって本稿で得られた知見の再確認のためにも、今後のそれらの課題が解消された、より精緻な研究が求められる。
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